簡単な経済学入門書だと思い購入
平積みになっていた
経済学を学ぼうと思っていました。
こう書くと大げさになってしまいますが、もっと気楽に、経済についての大雑把なところを知っておこうと思っていました。
マンキュー経済学I ミクロ編で学習しようかなと。思っているだけで購入はしませんでした。
ただ、頭の片隅にそういう思いはあったので、本屋で平積みになっている父が娘に語る 美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい経済の話を見て、簡単な経済学の入門書だと思い購入しました。
購入したのは結構前です。
とてもわかりやすい思想書
結論から言うと思想書のような感じでした。
思想書というと難しいイメージを抱いてしまいがちですがそうではなくて非常にわかりやすい思想書。
その「思い」は一言でいうと「現在の資本主義や経済は正しいのだろうか?と疑問を持ってほしい」。
「どこがどう間違っているからこうしましょう」とは書いてありません。
疑問を持って自分で考えてほしいという思いが本書を貫いています。
少し引用します。
「経済学を教える物として、若い人たちにわかる言葉で経済を説明できなければ教師として失格だとつねづね思ってきた。
そしてもうひとつ、経済学を教える中でさらに強く感じてきたことがある。それは、「経済モデルが科学的になればなるほど、目の前にあるリアルな経済から離れていく」ということだ。
物理学や工学といった自然科学の世界では、理論が洗練されればされるほど、自然の働きがよりわかりやすく目の前にさらされていくものだ。しかし経済学はどうも反対らしい。
(中略)
誰もが経済についてしっかり意見を言えることこそ、いい社会の必須条件であり、真の民主主義の前提条件だ。
引用元:父が娘に語る 美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい経済の話。p2
経済学は宗教?
経済学というのは難しくて大層なものというイメージを持っていました。
この本を読んだらそのようなイメージは一変しました。
「経済学は科学というより宗教に近い」と著者は本書の中で言っていますが、確かにそういう感じだな、と自分も同意しました。
これは経済学を軽視しているのではありません。経済学とはこういうものだというより適切なイメージを持っていることが経済学をより有益なものにすると思います。
以下は、ある人類学者がアフリカを探検し、ある部族と生活を共にする中で気づいたこと。それについて書いてある部分の引用です。
1920年、イギリス人の人類学者、E.Eエヴァンズ=プリチャードは、アフリカのアザンテ族の調査を行った。アザンテ族と生活を共にした彼は、人々が占い師に絶大な信頼を置いていることを発見した。
(中略)
しかし、予言がまったくの的外れであることも多かったので、どうして占い師が部族の中で絶大な力を持ち続けているのか、エヴァンズ=プリチャードは不思議に思った。
そして彼は、占い師への信頼が揺るがない理由について、次のような結論に至った。
「アザンテ族の人たちも予言が外れる理由を知りたがったが、あまりに迷信に囚われすぎていたので、予言が外れる理由も迷信で考えていた。迷信と現実が食い違っても、別の迷信を使って食い違いを説明していた」
いまの経済評論家も同じようなものだ。経済予測が間違うといつも、そもそも最初から間違っているその迷信のような考え方によって間違いを説明する。
そして、たまに新しい考え方が出てきて、最初の間違いが説明される。
引用元:父が娘に語る 美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい経済の話。p236,237
「信じる」ということはどういうことか。それを考えさせるきっかけともなる本です。
経済学の概説と映画、文学ガイドを兼ねているお得な本
購入目的も達成
経済学の概要を掴むという購入目的も達成できました。
特に、「わかりやすいたとえ」を使って説明されているので具体的なイメージを思い浮かべながら理解できます。
以前、別の本で経済学の概要を掴もうとしました。わかりやすさを重視して書いてあると思うのですが、かえってわかりにくくつまらないので読むのを途中でやめました。
帯の文句も誇大ではないです
その本に比べると断然面白いです。読み進めるほどに面白くなる本です。
なので続編が出たらそれも読みたい。これからの経済、資本主義の在り方についてのもっと具体的な提案など、著者の「ヤニス・バルファキス」さんの意見を聞きたいです。
索引を付けてほしかった
残念な点は一つ。索引がないこと。
この本で映画「マトリックス」のあらすじを知りました。単なるアクション映画と思っていたのですがそうでないことがわかりました。
ほかにも「2001年宇宙の旅」からの引用などが随所に盛り込まれており1つの映画ガイド、文学ガイドにもなっていて興味を広げるのにも役立ちます。
索引があれば作品名からで該当ページをすぐに開けるのであったらよかったのですが。
おすすめします
以下のような方におすすめします。
・経済学の大雑把な概要を掴みたい方。
・環境問題に興味がある方
・面白い本が読みたい方
この記事は以上です。